紫芋とはどんなサツマイモ?

紫芋は、中身が鮮やかな紫色をしたサツマイモの一種です。

その独特の色合いと栄養価の高さから近年注目を集めています。

本記事では、紫芋の基本的な特徴などについて、わかりやすくご説明したいと思います。

紫芋とは

一般に「紫芋」とは、断面まで紫色を帯びたサツマイモ(学名 Ipomoea batatas)のことを指します。

その鮮やかな紫色ゆえにジュースやお菓子の材料として親しまれてきました。

なお、沖縄などで栽培されるヤムイモの仲間にも中身が紫色の品種があり、これも「紫芋」と呼ばれることがありますが、サツマイモとは別の種類です。

混同しないよう注意しましょう。

紫芋の紫色は、サツマイモに含まれるポリフェノール色素であるアントシアニンによるものです。

アントシアニンはブルーベリーや赤ワインなどにも含まれる天然色素で、抗酸化作用を持つ成分として知られています。

この色素のおかげで、紫芋の皮も中身も美しい紫色を呈しているのです。

日本における紫芋の歴史と広がり

サツマイモ自体は17世紀初めに中国から沖縄経由で伝わり、薩摩(現在の鹿児島)で広まったため「薩摩いも」と呼ばれるようになりました。

紫芋(紫色品種)の詳しい起源ははっきりしませんが、沖縄県や鹿児島県など南九州で特産品として古くから親しまれており、戦後の品種改良の中でよりアントシアニン含有量の多い紫芋が作出され普及していきました。

特に沖縄では紫芋は「紅いも」とも呼ばれ、紅いもタルトに代表されるような鮮やかな菓子に利用されることで有名です。

現在では日本各地で紫芋が栽培されており、さつまいもの旬である秋(10~12月)を中心に市場に出回ります。

主な産地は茨城県、千葉県、宮崎県などで、品種によって生産地が異なります。

鹿児島県や沖縄県でも地域特産の紫芋が作られており、日本全国で多様な紫芋が楽しまれています。

紫芋の特徴と種類

紫芋の最大の特徴は何といってもその鮮やかな紫色にあります。

また、甘さや食感にも独特の傾向があり、さまざまな品種が存在します。

紫芋の色や風味の特徴と、代表的な品種について紹介します。

紫色の理由

紫芋が紫色をしているのは、アントシアニンという天然色素を豊富に含んでいるためです。

アントシアニンはポリフェノールの一種で、ブルーベリーや赤じそ、赤ワインなど紫や赤系の色を生む成分として知られています。

紫芋の皮や果肉の鮮やかな紫色は、このアントシアニンによる発色です。

ここで品種の違いにも触れておくと、紫の「濃さ」はどれも同じではありません。

たとえば農研機構が育成した紫肉品種 「ふくむらさき」 は、従来の紫芋として流通が多い 「パープルスイートロード」より紫肉色が濃いことが特徴です。

ふくむらさきのアントシアニン色価(色の強さの指標)はパープルスイートロードを上回るとされており、加工品で「しっかり紫を出したい」場面でも注目されています。

アントシアニンには抗酸化作用のほか眼の健康に寄与する機能などが報告されており(後述)、紫芋の色は見た目が美しいだけでなく健康面でも意味のあるものと言えます。

甘さと食感

紫芋は「見た目が濃い=甘みも濃い」と思われがちですが、甘さ・食感は品種によって幅があります

昔ながらの紫芋にはホクホク(粉質)寄りで、甘さが穏やかなタイプもあります。

一方で近年は、焼きいも需要の高まりを背景に、「甘くて食味が良い紫芋」を目指した品種も育成されています。

その代表例が 「ふくむらさき」 です。

農研機構の発表では、ふくむらさきの焼きいもは パープルスイートロードより「しっとり」しており、官能評価でも甘さや食感が優れるため総合評価が高いとされています。

さらに、蒸しいも・焼きいもの糖度(Brix)はパープルスイートロードより高く、「べにはるか」と同程度とされ、紫芋の中でも甘さを期待して選べる品種として位置づけられています。

ふくむらさき以外の紫芋の食感については、でんぷん質が多めでホクホクとした粉質のものが多い傾向があります。

例えば鹿児島の種子島紫芋は皮が白っぽく中は薄紫色ですが、やや粉質で加熱するとホクホクした食感が楽しめる品種です。

このホクホク感と控えめな甘さの組み合わせが、紫芋の上品な風味を生み出しています。

総じて言えば、紫芋は鮮やかな見た目に反して甘さは穏やかで、食感はホクホク系が多いという特徴があります。

主な紫芋の品種

紫芋には全国各地で様々な品種が栽培されています。

用途(生食用か加工用か)や育成された地域によって特徴も異なります。ここでは代表的な紫芋の品種をいくつか紹介します。

品種名(主な産地)特徴・風味など
ふくむらさき(関東中心・茨城など)農研機構育成の紫肉カンショで、「九系255」×「パープルスイートロード」の交配から生まれた品種です。
紫肉色が濃く、蒸しいも・焼きいもで糖度(Brix)が高く、しっとり(やや粘質)で食味が良いのが特徴です。
さらにアントシアニン色価は「パープルスイートロード」を上回るとされています。
なお、いもが小さめで収量が少なめのため、早掘りを避けて十分な生育期間を確保することが推奨されています。
アヤムラサキ(南九州ほか)1990年代に農研機構で開発された代表的な紫芋です。
非常に高いアントシアニン含有量を誇り、果肉の紫色が特に濃いのが特徴。
糖度は12~14度程度と控えめで、主に色素用や加工用(紅いもペースト等)として利用されます。
粉質でホクホクした食感があり、上品な甘さです。
焼酎の原料にも使用されるなど、用途の広い品種です。
パープルスイートロード(関東・九州ほか)2003年に宮崎県で品種登録された比較的新しい紫芋です。
従来の紫芋より甘みが強く食味が良い品種です。
紫芋の中では抜いて食べやすいことから「紫芋の王様」の名を冠しています。
果肉の色合いはアヤムラサキよりやや淡い紫色です。
糖度は12度前後と控えめですが、しっとり感もあって甘さと食感のバランスに優れ、生食用(焼き芋・ふかし芋)に適します。
栽培もしやすく収量も多いため、市場流通の主力となっている品種です。
種子島むらさき(鹿児島・種子島)鹿児島県種子島で古くから栽培されてきた在来種の紫芋です。
皮は淡い色で中は薄紫色をしており、加熱すると濃い紫色に変化します。
強い甘みを持ちでんぷん質が多いため、菓子加工用だけでなく焼き芋や蒸し芋でも美味しく食べることができます。
紫芋特有の上品な甘さを活かして芋焼酎の原料にも利用されています。
昔ながらの風味を持つ品種で、地域では貴重な存在です。
種子島ゴールド(鹿児島・種子島)1999年に種子島むらさきから選抜育成された新品種です。
名前に「ゴールド」とありますが果肉は紫色で、紫芋の中では甘みが特に強いことが特徴です。
焼き芋やふかし芋、天ぷらなど様々な調理に適し、和菓子・洋菓子の原料としても利用されます。
生産量が少なく市場ではあまり見かけませんが、その希少性から「幻の紫芋」と称されることもあります。
上品な甘さとしっとりした食感を併せ持つ逸品です。

※この他にも、熊本県のアケムラサキ、鹿児島県のムラサキマサリ、沖縄県のちゅら恋紅沖夢紫など、各地で多彩な紫芋品種が育成されています。

それぞれ色の濃さや甘味、用途に特徴があり、地域の特産品や加工品の素材として活用されています。

近年は耐病性や食味を改良した新品種の開発も進んでおり、今後も紫芋のバリエーションはさらに広がっていくでしょう。

紫芋の栄養価と健康効果

紫芋は見た目が鮮やかなだけでなく、栄養面でも優れた食品です。

サツマイモ由来のビタミンや食物繊維に加え、紫芋特有のポリフェノールも含まれており、健康への様々な効果が期待できます。

このセクションでは、紫芋に含まれる主な栄養素と、その摂取によって期待できる健康効果について詳しく説明します。

紫芋の主な栄養成分

紫芋には通常のサツマイモと同様に多様な栄養素が含まれています。

代表的なものとしては食物繊維ビタミンCビタミンEカリウムカルシウムβ-カロテンなどが挙げられます。

中でもビタミンCは果物のリンゴの約5倍含まれるとも言われるほど豊富で、しかもサツマイモに含まれるデンプンによって保護されているため加熱調理しても壊れにくいという特長があります。

ビタミンEも抗酸化作用を持つ栄養素で、紫芋100g中に約1.3mg含まれます(生のさつまいも、七訂食品成分表より)。

また、紫芋は色のもとになっているアントシアニンというポリフェノール色素も多量に含有しています。

このように紫芋はビタミン類やミネラル、食物繊維に富み、さらに機能性成分であるアントシアニンも摂取できる食材なのです。

紫芋で期待できる健康効果

紫芋特有のアントシアニン色素にも健康メリットがあります。

アントシアニンは強力な抗酸化作用を持ち、体内の活性酸素を抑制して老化や病気から体を守る働きが期待できます。

特にアントシアニンは目の網膜に作用して眼精疲労の軽減や視力低下の予防に効果があるとされ、ブルーベリー由来のサプリメントなどにも利用されています。

紫芋を食べることで同様にアントシアニンを摂取できるため、スマホやパソコンで目を酷使しがちな現代人には嬉しい食品です。

他にもアントシアニンには肝機能を高める効果や、美肌・美白への寄与などが報告されています。

総じて、紫芋は栄養面・機能面から見ても「身体に優しいお芋」と言えるでしょう。

まとめ

紫芋は、美しい紫色の見た目と豊富な栄養を兼ね備えた魅力的な食材です。

一般的なサツマイモより甘さは控えめですが、その分上品で優しい風味があり、料理やお菓子に取り入れると彩りと味わいの両面で楽しませてくれます。

品種改良により様々な特徴を持つ紫芋が誕生しており、それぞれに個性的な味や用途があります。

栄養面では食物繊維やビタミン類、ポリフェノール(アントシアニン)などを含み、健康維持にも一役買ってくれる嬉しい食材です。

選び方や保存方法のポイントを押さえておけば、旬の紫芋を長く美味しく味わうことができます。

ぜひこの機会に紫芋についての理解を深め、その魅力を日々の食卓で実感してみてください。

疑問が解消し、紫芋をますます身近に感じていただければ幸いです。